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2023.12.12

業界コラム

GX(グリーントランスフォーメーション)における注目の技術

 全く耳慣れない言葉に、わかったようでよくわからない「GX」。このあたりで一度きっちりと情報を整理し、最先端の情報に触れてみませんか。それではまず、GXについて確認しましょう。

 GXとは、Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称になります。グリーントランスフォーメーションは、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーへ、経済活動との両立を行いながらシフトしていく変革です。

 前提として、温室効果ガス(主にCO2)が太陽光による熱の放散を阻害することで、地球温暖化の影響が起こり始めている背景があります。温暖化を放置することは、いずれ人類の生息域をせばめてしまうような災厄へとつながりかねません。

 そのため、日本を含む世界120の国々が、2050年には温室効果ガスの代表であるCO2の排出を実質ゼロにしましょう、という目標を立てて努力しています。これが「カーボンニュートラル」と呼ばれる概念です。欧米では「NetZERO」という言葉のほうが浸透しているかもしれません。
簡潔に整理します。

 これまでに人類が得た文明の恩恵を手放すことなく、CO2の排出を実質ゼロにする。むずかしい課題ですが、シンプルに考えれば以下の2つに集約されます。

 「エネルギー」と言っても、人類が求めているのは、ほとんど「電力」です。電気は、光、熱、力、情報などへと柔軟に変化し、消費時にCO2を排出しません。逆に、電気をつくるために多くのCO2を排出すると本末転倒になります。つまり、どのようにしてCO2を排出せずに電気をつくるか、を考えることになります。
 
 また、より小さなエネルギーで同じ効果が得られるような技術革新も必要です。ガソリンの爆発による自動車の推進力(熱効率)は、せいぜい50%程度ですが、モータによる推進力は80%ほどあります。だからエンジンはモータへ置き換わろうとしています。

 効率が良いということは、同じ仕事なら、より小さなエネルギーで仕事ができるということです。CO2を排出せずに電気をつくり、仕事はより小さな電気で行う。大げさですが、これが人類が生き残るキモになります。そして、その具体例のひとつが、次に紹介する「ペロブスカイト」です。

これまでの太陽電池を変える!―ペロブスカイト太陽電池

 「ペロブスカイト」とは鉛、ヨウ素、その他有機化合物で形成される結晶構造の名称です。現在、主流となる太陽電池は多結晶シリコンが素材ですが、このペロブスカイトを用いても太陽電池を造ることができます。ペロブスカイト太陽電池 は、桐蔭横浜大学の宮坂力(みやさかつとむ)特任教授が発明した日本発の技術です。

 多結晶シリコンとペロブスカイトの差異を説明する前に、太陽電池の原理について少し解説しましょう。

 物質に光が当たると、その物質は光エネルギーを吸収して電子振動が大きくなります。手に光が当たると暖かく感じますが、これが大きくなった電子振動=熱です。物質の中には振動だけでなく、電子を放出するものもあります。

 この放出された電子を線でつないでもとの物質に戻してあげると、電気が循環します。これが、太陽電池です。太陽電池は電気を貯めておくことができませんから、正確には「太陽光発電器」ですが、「太陽電池」で名称は定着しました。

 そして効率よく電子を放出する物質が多結晶シリコンであり、ペロブスカイトなのです。

 では、従来の多結晶シリコンによる太陽電池とどう違うのかを見ていきましょう。

 気になる発電効率は最近の研究・開発の成果により、従来の多結晶シリコン太陽電池に迫っています。最大の特長はフィルム状で軽く、曲げられることです。

 この特性により、まとまった平地を必要とせず、東京など地代の高い都市部でもビルのガラスや壁面で発電可能になります。国土の70%を山林が占め、残りの平地でやりくりしている日本では助かりますね。

 フィルム状ですから、自動車やドローンにラッピングして走行維持の長時間化を図ることもできそうです。また、生産にあたってレアメタルを必要としませんので、材料を海外依存する必要はなく、比較的低コストで安定した生産が行えます。

 しかし、まだ課題は残されています。それは、大面積に均一の厚みで塗布することがむずかしく、発電効率が安定しないこと。シリコンと比較して熱の影響により物性が変わりやすく、耐用年数が短いこと。

 そして、ヨウ素や鉛は人体にとって毒になるためその封止をしっかりとしなければならないこと、などです。

 これらの課題は、政府の後押しのもと、国内研究機関、大企業、技術的トップランナー企業が積極的に取り組んでいます。両面テープなど、もりや産業のお取引先でもある積水化学様も開発の筆頭に立ち、東芝、カネカ、アイシン、エネコートテクノロジーズなどの企業も技術開発を進めています。

 ペロブスカイト太陽電池は、中国、米国、欧州などの海外勢も力を入れて開発に取り組んでいる製品で、日本発の技術でありながら、製造に関する特許申請数などは中国に押され気味なほどです。

 半導体や液晶パネルのように開発技術でリードしておきながら、世界市場では置いて行かれてしまうような状態にならないよう、オールジャパンチームにはぜひともがんばってもらいたいところです。

まとめ

 ペロブスカイト太陽電池は最短上梓2025年とも言われています。実際、商品として登場するまではあと数年~7年以内というところでしょうか。政府も2025年の実用化を目指すとしています。

 高い発電効率で、軽く、窓などの垂直方向にも曲面にも貼ることができる太陽電池がもうすぐやってきます。普及のため、固定価格買取制度(FIT制度)にも含まれてくるでしょう。

 これはあなたの工場や事業所などの拠点に、補助金や助成金などの補助を受けながら、重量リスクなしで低価格・高効率な太陽光発電設備導入の可能性を示しています。もりや産業は、ただいまこの技術に注目し詳細な情報を集めています。